ソ・チェヒョン、シウラナでLa Rambla(9a+/5.15a)再登、続いてモンサンでL’Antagonista(8c/5.14b)オンサイト

planetmountain.com
訳=羽鎌田学

11月下旬、19歳の韓国人クライマー、ソ・チェヒョンがスペインのシウラナにあるLa Rambla(9a+)を再登し、2017年のマーゴ・ヘイズに次いで、この象徴的なルートを登った2人目の女性クライマーとなった。

この11月1日に19歳になったばかりのソ・チェヒョンが、スペインを代表する岩場のひとつであるシウラナにある世界で最も有名な9a+ルートの一本、La Ramblaの再登に成功した。この膨大なスタミナを試されるテストピースは、1994年にドイツ人クライマー、アレクサンダー・フーバーが壁の3/4ほどの高さにあるポケットまで登り、ひとまず完成としたものを、その後2003年に、奇しくもチェヒョンが生まれた年に、ラモン・ジュリアン・プッチブランカが壁の抜け口まで延長し初登したルートである。時を経て、このグレードの数あるルートの中でも最も切望される一本となり、2017年にはアメリカのマーゴ・ヘイズがこれを完登し、世界で初めて9a+を登った女性クライマーとなったルートでもある。


La Rambla(9a+)を登るソ・チェヒョン Bernardo Gimenez

ソ・チェヒョンはもっぱらコンペティションクライマーとして知られており、シニアデビューを果たした2019年のリード・ワールドカップでは、いきなり年間タイトルを獲得。続いて2021年にロシアのモスクワで開催されたリード世界選手権では見事優勝に輝き、今シーズンはヤーニャ・ガルンブレットに次ぐ、年間総合2位となった。

チェヒョンは、2018年、まだ14歳の時にアメリカ、コロラド州ライフルで9aのBad Girls Clubを登り、それが今までの最高RPグレードであった。そして、2019年の短期間のシウラナ滞在時にLa Ramblaを目にした彼女は、今年はこのルートを念頭に置いてスペインに出発。計5日間、わずか7回目のトライでRP。特にこの少ないトライ数での完登には、彼女の今後のパフォーマンスに多くの期待を抱かされる。

La Rambla再登者一覧
1994年-アレクサンダー・フーバー、オリジナルルート(中間支点まで)初登
2003年-ラモン・ジュリアン・プッチブランカ、延長ルート(現行ルート)初登
2006年-エドゥ・マリン・ガルシア(スペイン)
2006年-クリス・シャーマ(米国)
2007年-アンドレアス・ビントハマー(ドイツ)
2007年-パチ・ウソビアガ(スペイン)
2008年-アダム・オンドラ(チェコ)、15歳
2011年-エンゾ・オッド(フランス)
2013年-安間佐千(日本)
2013年-フェリックス・ノイメアカー(ドイツ)
2013年-ソン・サンウォン(韓国)
2013年-アレクサンダー・メゴス(ドイツ)、2撃
2014年-ダニエル・ユング(ドイツ)
2015年-ジョナサン・シーグリスト(米国)
2017年-マティ・ホン(米国)
2017年-マーゴ・ヘイズ(米国)、初女性クライマー
2017年-ステファノ・ギゾルフィ(イタリア)
2017年-ヤーコポ・ラルケル(イタリア)
2017年-クレメン・ベーチャン(スロベニア)
2017年-セバスチャン・ブワン(フランス)
2018年-トマス・ラバナル(チリ)
2018年-ジョン・カードウェル(米国)
2019年-ピオートル・スハーブ(ポーランド)
2019年-デイブ・グレアム(米国)
2019年-ゴンサロ・ラローチャ(スペイン)
2019年-セドリック・ラシャ(スイス)
2021年-ホルヘ・ディアス=ルージョ(スペイン)
2022年-ソ・チェヒョン(韓国)

そして、La Ramblaを再登した数日後には、シウラナにほど近いモンサン(地元カタルーニャ語読みでムンサン)の岩場で8cのL’Antagonistaをオンサイトした。この60mに及ぶ超ロング・ルートの素晴らしいオンサイトにより、チェヒョンは、今度は8cルートをオンサイトした2人目の女性クライマーとなったのである。


L’Antagonista(8c)をオンサイトするチェヒョン

これは、先日のLa Rambla(9a+)再登に要したトライ数の少なさが示唆する、彼女の今後のパフォーマンスに関する我々の予想を裏付ける結果となった。

時を置かずして、それはもう単なる予想ではなく、L’Antagonistaのオンサイトというひとつの厳然たる事実となったのだ。2021年世界選手権チャンピオンは、自らを世界で8cをオンサイトした2人目の女性として位置づける偉業を成し遂げたのである。1人目の女性は、2021年11月にスペインのオリアナで8cのFish Eyeを、その2日後には同岩場でやはり8cであるAmerican Hustleをオンサイトして、その成果を倍増させたヤーニャ・ガルンブレットである。ヤーニャは過去10年間、スポーツクライミング界の頂点に君臨し続けてきたが、この彼女の揺るぎない覇権は今、脅かされ始めたようだ。

当日、チェヒョンは、同じ壁にあるHidrofobia(8b/+)を同様のスタイルで登った後、短いレストを挟んでL’Antagonistaにトライ。そして、持てる力をフルに発揮しながら、これをほぼ1時間かけてオンサイトし、自らの名を歴史に刻んだのだ。彼女のスペイン滞在は程なく終わりを告げるが、最先端の女性スポーツクライミングにとってエキサイティングな時代が始まりつつあることに疑いの余地はない。

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