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バブシ・ツァンガール、ヤーコポ・ラルケル、レーティコンのSeventh Direction(8c、220m)再登
Dave Yarwood
訳=羽鎌田学
バブシ・ツァンガールとヤーコポ・ラルケルは、8月中旬に達成した同じ壁にあるThe Gift(8c、350m、7ピッチ)の第2登に続き、Seventh Directionの各自第3登と第4登に成功した。同時にバブシは、The Giftに続き、同ルートを登った初の女性クライマーとなった。
スイスとオーストリアの国境沿いに位置するレーティコン山群のドルーゼンフルー東壁(オーストリア側)に引かれた全長220mのSeventh Directionは、計7ピッチのうち5ピッチ目が核心で、ルート中最難の8cとグレーディングされている。ルートは東壁の特に傾斜の強い部分をたどり、全体を通してストレニュアスなクライミングが続く。
バブシとヤーコポの再登は、彼らの1週間ほど前にオーストリアの若手クライマー、地元フォアアールベルク州生まれのニミュル・フォイアレが達成した第2登に続くものであった。
以下は、バブシのコメントである。
「8月15日、私たちの夏のプロジェクトであったThe Giftを終えた後、ニモ(ニミュル・フォイアレの愛称)が同じ岩壁の約50m左手にあるSeventh Directionの再登に成功したと耳にしました。The Giftは、計7ピッチのうち、ワンピッチが非常に厳しい8cで、もうワンピッチが8a+でした。それに比べて、Seventh Directionは一貫して難しいピッチが続き、壁の最も急峻な部分をたどるルートです。
The Giftに取り付いている間、私たちはその露出感満点のルートで派手にフォールするニモの姿を何度も見かけました。彼は昨年と今年、夏の2シーズンの間に10日間ほどかけてその急峻なラインに挑み、ついに8月24日にSeventh Directionの第2登に成功したのでした」
「ヤーコポは、The Giftを完登した後、感触を得るために、ニモのSeventh Directionトライに1日合流させてもらいました。彼らは最初の高難度ピッチを一緒に登ったのですが、その時は激しい雷雨のために途中で撤退を余儀なくされました。次のトライの時には、私も彼らに合流しました」
「その後、ヤーコポと私は2人でSeventh Directionに取り付き、3日間を費やしてトライし、ムーブを探りました。私たちはすべてのピッチに手をつけ、難しいパートで解決策を見つけることができたのですが、これは、私たちより前にトライしていたニモの多大なる労力のおかげでした。彼はフィックスロープを残しておいてくれたし、ルートはすでにきれいに掃除されていて、チョークの跡も新しく、私たちのトライは少し楽になったのです。さまざまなピッチを計3日間練習した後、私たちはレッドポイントトライに挑むことにしました。
8ピッチのうち5ピッチは8aから8b+の範疇で、私たちはThe Giftと同じ方法でアプローチすることにしました。つまり、1日は2人のうちの1人がすべてのピッチをリードし、別の日にもう1人がリードするのです。どちらが先にトップで登るのかを決めるためには、じゃんけんをしました。幸運にも私が勝ち、次の日に最初にリードで登る権利を手に入れたのです」
「9月1日、その日は雷雨の可能性が高かったので、朝早めに出発しました。最初の3ピッチは簡単でしたが、壁の被った部分にある最初の難しいピッチで全エネルギーを奪われてしまいました。十分にウォーミングアップができていなかったせいで、そのピッチを登るのに苦労し、すっかり消耗してしまいました。腕はパンパンになり、オーバーハングした最初の難しいパートをクリアした時点で、すでに疲れきっていました。短い時間ですがレストしたら、自信を少し取り戻すことはできたのですが、まだまだナーバスなままでした。でも、登り続けました。
次の高難度ピッチでは、トリッキーなボルダームーブをなんとかこなし粘りに粘りましたが、アンカー直前で落ちてしまいました。悔しくて爆発しそうでした。ヤーコポにビレイポイントまで降ろしてもらい、45分ほど休んでもう一度トライ。今度はアンカーまで無事に登りきりました。ゲームに復帰できたのです」
「次は、ルート中で一番難しいピッチでした。全力を尽くして登り続け、なんとかすべての難所を切り抜け、その核心となるピッチのアンカーにクリップした時、ホッとしました。その日のうちに全ピッチを登る可能性がまだ少し残っていることに気がついたのです。でも、黒い雲が少しずつ空を覆い始めていました。雨が心配になったので、あまり休むことなく、次の8aピッチを登り出しました。そこを素早く突破し、空がよりいっそう暗くなる中、最終ピッチのビレイポイントにたどり着きました。
耳に入る雷鳴がだんだん大きくなってきていました。そこで、時間を節約するために、ヤーコポにはそのピッチはユマールで登ってきてもらいました。またもや十分に休む時間もなく、一番練習した最後のピッチに取り掛かりました。そのピッチには自信がありましたが、とても疲れていました。おそらく焦りとプレッシャーが大き過ぎて、最後まで登り続けられなかったのでしょう。またもや、ほとんど最後のムーブで落ちてしまいました。もう終わりだ、と肩を落としました。
しかし、奇跡が起こったのです。私たちの周りでは既に雨が降り出していたのに、頭上の雲の覆いに小さな青い窓が開いたのです。1時間レストすると、空は晴れ、もう一度チャンスが巡ってきました。ようやくしっかりレストでき、気分もリラックスしていました。難しいパートをこなしながら登り続けました。そして、遂にルートの終了点にたどり着いたのです」
「その日は、レーティコンで過ごした中で最も充実した、モチベーションに満ち溢れた一日となりました。ドルーゼンフルー峰ゲルベック東壁の最もワイルドな部分に引かれた、信じられないほど強傾斜のルートでした。この驚くべきルートをプレゼントしてくれた初登者であるアレックス・ルガー、ありがとう。そして、一日中ビレーに専念してくれて、最高の瞬間を共有してくれたパートナーに心の底から感謝」
「パートナーのヤーコポは2日後の9月3日にこのルートを完登しました。彼は一度もフォールしませんでした。リードで全ピッチを一撃したのです!完璧な一日でした。私たちは超高速で登り、2人とも一度もロープに身を預けることなく、午後2時半頃にはすでに壁の頂点に立っていました」
「それは、美しいレーティコンのオーストリア側で多くの時間を過ごした、素晴らしい夏の完璧なエンディングでした」
※2022年8月6日にワンデイ・フリーアッセントに初めて成功したアレックス・ルガーの手書きのトポでは各ピッチのグレードは以下のようになっている。
P1=VI(5.10a)、P2=VI(5.10a)、P3=X(5.13d)、P4=X+(5.14a)、P5=XI-(5.14b/c)、P6=X-(5.13b/c)、P7=X(5.13d)
上のバルバラ・ツァンガールのコメント内では、ルートを「8ピッチ」とし「最初の3ピッチは簡単」とされているが、実際にはルート取付きの手前にはUIAAグレードIII(5.4)、200mとされる登りがあるので、彼女とヤーコポは取付き手前のその登りでワンピッチ、ロープを使ったと推測される。
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