11歳のレオ・セア・ブリートナー、チリ、ラス・チルカスでTecnoking(5.14d)第2登

climbing.com
訳=羽鎌田学

2024年3月20日、レオ・セア・ブリートナーが11歳(正確には11歳と3ヵ月)で、チリのラス・チルカスの岩場にあるTecnoking(5.14d)の第2登を達成した。これにより、レオは5.14dを登った新たな最年少記録保持者となった。このタイトルは、2022年にフランスの少年、テオ・ブラスが12歳で獲得、保持していたものである。

Tecnokingは、ローカルクライマー、ロニー・エスコバール・オルテガによって2024年1月に初登されたばかりのルートだ。バルパライソ州サン・フェリペ・デ・アコンカグア県ジャイジャイ町の岩場ラス・チルカスにある。レオが住む太平洋岸沿いのビーニャ・デル・マール市からは車で東へ1時間と少し、チリの首都サンティアゴからはやはり車で北へわずか50分ほどのところに位置する。

それは、礫岩の壁をトラバース気味に登る、全長25mほどの迫力あるリンクルートで、エッジ、スローパー、ポケット、ピンチ、スローピーディッシュ(大きめの礫が外れた皿状の窪み)がミックスしている。Me Gusta Cuando Callan(5.13d)からスタートし、Si los Perros Ladran es porque Cabalgamos(5.14b)に合流するルートで、核心はその2本のルートの間にあるCinco Virtudes(5.14b)を横切るところだ。Tecnokingは、テクノブローケと呼ばれる岩の南面にある最も困難なパートを結んでいくルートなのだ。

「これは今チリにある3本の9a(5.14d)のうちの1本です」と、レオの父親レネ・セア・バレンシアは説明する。

「大人の場合なら70ムーブほどで構成される長いルートですが、身長137cmほどのレオの場合、80ムーブ以上になります。テクノブローケの岩の南面は全体的に被っていますが、そのほぼ全面を左下から右上へと斜めに登っていくルートです」

レオは2012年12月にドイツ北西部の都市オルデンブルクで生まれ、彼が1歳になる前に家族はチリに移住。2020年に父親やその友人たちと一緒に岩場に行くようになり、クライミングに親しみ始める。最初の1年は、トップロープでのクライミングを楽しんでいた。レオの母親マーレン・ブリートナーと父親のレネは、彼らの子供たちはみんな、レオを始め、ポール(14歳)、インティ(8歳)、さらにはまだ1歳のアルマも、ほとんどいつも家の周りにある木、岩、壁の支えの梁などを登って遊んでいると話す。

最初、レオはクライミングシューズを持っていなくて常に裸足で登っていた。次第に上のグレードのルートが登れるようになっても、裸足だった。そして2023年4月、10歳と4ヵ月で、やはりラス・チルカスでSimpatía por el Diabloという8a(5.13b)のルートを初めて登ったのだが、父親からの完登祝いが、1足目のシューズ、ラ・スポルティバのカタナレースウーマンだったそうだ。

クライミングシューズを買ってもらったレオは、さらに高グレードのルートを登り続けた。彼はシューズをプレゼントされてから僅か6ヵ月後、2023年10月には、Herejia (5.13d)を登り、この2月にはTecnokingの最後の3分の1となっているSi los Perros Ladran es porque Cabalgamos(5.14b)をRP。その後、Tecnokingのフルラインに照準を合わせたという。

レオがTecnokingを完登した日、トライ11日目の3月20日は珍しく曇っていた。最初のトライでは、核心最後の、右手の2本指で遠くの小さなポケットを取りにいく、正確さが求められるムーブで失敗し、フォール。それはレオがかなりの時間をかけて完成させたムーブだった。コーチのダニエル・セルマンは、ジムにレプリカを作り、レオがそのムーブを練習できるようにしたと言う。

その日の2度目、通算25度目のトライで、彼はスタートのMe Gusta Cuando Callanの前傾パートを難なくこなし、次のCinco Virtudesを横切る核心のパートも淀みなく越える。「前回落ちてしまった核心を越えた時、これでRPできると思った」と、レオは言う。

それほど多くはなかったが、同じセクターにいたクライマーたちが彼の登りを見るために集まっていた。終了点にクリップしても、まだ事態を良く呑み込めていなかったレオは「僕、本当に登ったの?」と、彼らに尋ねる。これに全員が「シィ、ポー!(そうだ、もちろんだ)」と答える。それを聞いて有頂天になったレオは、終了点のカラビナからロープを外し、クライムダウンし始める。「まだ登ってなくちゃいけないって感じたんだ」と、彼は言う。遂にフォールした時には、なんと核心のパートまでクライムダウンしていたのだった。

レオは現在、地元のヴァルドルフ学校の5年生で、運動の授業が一番好きだと言う。また、クライミングをしていない時は、ナイフで木を削ったり、ゲームをしたりするのが好きなようだ。先日我々climbing.comは、台所のテーブルの脇に立ったままの彼とグーグル・ミートのビデオチャットで話しをしたのだが、彼の茶色の巻き毛の髪は同じ色の茶色の目の上に垂れ下がり、その顔には満面の笑みが浮かんでいた。彼は興奮すると大声で早口で話していたが、クライミングの成果についてとなると、恥ずかしそうに口を開くのだった。TecnokingのRPはどんな感じだったかという質問に対する彼の答えは、近くに座っていた両親への囁くようなひと言だった。

そのTecnokingを登るための最良のトレーニングは「ただ登ること」だった、とレオは言う。コーチのダニエル・セルマンの助けを借りて、レオは目標のルートに焦点を当てたトレーニングプログラムを、例えば特定のシーケンスに合わせたジムでのセッションを考え、またクライミングのムーブのレパートリーを増やすようにもしたと言う。ウェイトトレーニングやキャンパスボードトレーニングは行わず、ジムで登る時間と週に何日かの外岩でのセッションをセットにして、かつ意図的なレスト日と主にストレッチをする日を交えて、RPに備えたようだ。

レオのクライミングには、その年齢を超えた経験を感じさせられる。彼は、パワフルかつ流れるような登りをする。そして、いつどこでレストすべきか、そしていつフルパワーで登るべきかを知っているのは明らかだ。Tecnokingの核心を無事通過した後は、彼はリラックスして登っていった。残りのパートも依然困難ではあったが。まだほんの11歳ではあるが、彼のクライミングに関する知識は大きいようだ。それと同じように、登るという行為から感じる喜びも大きいはずだ。そうでなかったら、いったい誰が終了点まで登ってから、クライムダウンするだろうか?きっと登ることが楽しくて仕方がないのだろう。

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