DVD Review Vol.5

『GiaNizm4』『AUTANA』『DEEP BLUE』『Stoney Point』『ODYSSEY』『WIDE BOYZ』 

構成・文=榎戸雄一(雪山大好きっ娘。) 

*この記事は『ROCK&SNOW No.58 2012年12月号』掲載記事をもとにしています。

『GiaNizm4』

GiaNizm Project
www.gianizm.com
村岡達哉さん、濱田健介さんを中心とした滋賀周辺の若手ボルダラーが、国内外の課題を登りまくる怒濤のGiaNizmシリーズ第4弾。登場する岩場は、愛知の豊田、岐阜の恵那、広島の戸河内、宮崎の比叡、日之影など西日本のエリアを中心に、50近い課題が盛り込まれている。ボルダラーはGiaNizmのメンバーに加え、三重のユース・田嶋瑞貴君や松島暁人さんらも登場するが、やはり目立つのは村岡さん。豊田・アガルタ(五段)の第2登シーンや、締めに登場する、世界初のV15となったスイス・クレシアーノにあるDreamtimeのスタートホールドが欠けて以来の、アダム・オンドラに続く第2登シーンは見応えがある。

『AUTANA』

Posing Productions
www.posingproductions.com/product.php? form_action=detail&product_id=256
イギリスのレオ・ホールディング、アメリカのショーン・レアリーら3人が、ベネズエラのテプイ(現地の言葉で「テーブル状の山」の意)のひとつであるAutanaの壁を初登したときの映像。現地のガイドを頼りに、アマゾンのジャングルをヤブこぎしながら遠征はスタート。怪しげな爬虫類や虫がうごめく熱帯雨林から逃げるように壁に取り付く。しかしながら、壁はもろいうえにドロドロで、全身泥まみれになりながらのクライミングは、フリークライミングではあるものの、クライミングの域を超えており、ほとんど探検だ。

『DEEP BLUE』

Rock Warrior Films
http://rockwarriorfilms.com/Rockwarriorfilms.com/Deep_Blue.html
アメリカ南部のボルダーエリアを専門に撮っているRock Warrior Filmsの最新作は、カリフォルニア州とネバダ州にまたがる湖、Lake Tahoeがテーマ。リゾート地としても有名なエリアなだけあって、すばらしい景観が広がっている。このエリアにはまだまだ未登の岩が転がっているようで、数々の初登シーンも盛り込まれている。彼らの作品コンセプトはGiaNizmと似ており、ローカルクライマーを中心にして、とにかく量を詰め込むスタイル。今回もゲストクライマーとして、リサ・ランズと夫であるウィルス・ヤングが登場し、締めを飾っている。

『Stoney Point』

Half Circle G Productions
http://stoneypointdocumentary.com
カリフォルニア・ロサンゼルス郊外にある岩場Stoney Pointに焦点を当てた映像作品。カリフォルニアという場所とアプローチの手軽さに加え、手ごろなボルダーがそろっていることもあり、フリークライミング黎明期から数々の著名クライマーが訪れ、課題を残している。イヴォン・シュイナード、ロイヤル・ロビンスから始まり、リン・ヒルやジョン・バーカーを経てマイケル・リアドンと非常に多彩だ。ローカルクライマーが語る岩場の歴史は、そのままフリークライミングの歴史ともいえる。高難度課題があるわけではないため、現在は初心者クライマーの交流の場としてのコミュニティ的な役割が大きくなっている。

『ODYSSEY』

Hot Aches Productions
http://hotaches.com/the-odyssey
イギリスのジェームズ・ピアソンやヘイゼル・フィンドレイなど4人のクライマーが、クラシックから新ルートまで、さまざまなUKトラッドの課題を登る意欲作。UKトラッドに慣れた彼らにとって、Eグレードも手慣れたもので、ぼろぼろの壁、プアプロ、ランナウトをものともせず、「怖い怖い」と言いつつも楽しそうに登っている。クライミングの本質は不変だが、一昔前のUKトラッドのイメージとは大きく変わっている。特に注目は、女性としてのEグレードの記録をもち、エルキャプのマイナーなフリールートを2本も登っているヘイゼル。クライマーらしからぬ体形だが、がんがん登っていくスタイルは非常に力強く男勝りだ。

『WIDE BOYZ』

Hot Aches Productions
hotaches.com/shop/wide-boyz/
アメリカの高難度ワイドクラックを総なめにして一世を風靡した、イギリスのワイドボーイズこと、ピート・ウィッタカーとトム・ランドールが昨年初登した、世界最難のワイドクラックCentury Crackに焦点を当てた作品。ルーフセクションが30m以上も続くこのクラックを登るため、2年前から自宅を改造してハードなトレーニングを積み、満を持してのトライ。そして、あっさりと2、3トライで登ってしまう。しかしながら、ワイド特有の登りは非常に熱く奮闘的だ。完登後の感情の爆発、終わったという開放感と、目標を登ってしまった喪失感、お互いにルーフクラックを見上げながら涙するシーンには、見ているこちらにもジーンとくるものがある。