DVD Review Vol.3

『Dai’s Video Diaries vol.3』『LIFE ON HOLD』『WESTERN GOLD』『Welcome to the Hood』『Icon』『The Bishop Dispatch Part1 & 2』 

構成・文=榎戸雄一(雪山大好きっ娘。) 

*この記事は『ROCK&SNOW No.56 2012年6月号』掲載記事をもとにしています。

 

『Dai’s Video Diaries vol.3』 daihold

www.daihold.com

小山田大さんが2010年から11年にかけて海外で登ったボルダーを収録。登場するエリアは、キロニコ、マジックウッド、クレシアーノとスイスが中心で、ほかには、景観のすばらしさで有名なスイスのスステンパスが少々。 見どころはやはりIn Search Of Time Lost(8C)の第2登シーンだ。ダニエル・ウッズが08年に初登したDarkness Caveにあるこの課題は、名前どおりの暗い洞窟の奥から、ルーフのカチをつないで外へ出ていくというもの。小山田さんは自身のジム「プロジェクト」のプライベートルームにシミュレーション課題を作り、トレーニングを重ねた末の完登で、気迫のトレーニングやトライシーンは見応えあり。 収録されている20以上の課題は、ほとんどが三段以上だが、小山田さんは軽快にサクサク登っていくので、非常に心地よく見られる。

『LIFE ON HOLD』 Outcrop Films

www.outcropfilms.com

不朽の名作『hard grit』の再来といわれている作品だが大げさではない。最近は、UK Gritの怖さや特殊性だけをことさらに強調して、クライマーの葛藤は置き去りな作品が多かったが、今作はUK Gritの特徴であるスローパーやスラブ、カンテなどパワーだけでなく、技術や精神力で登るボルダー課題を中心に扱っており、特にハイボールでの進退窮まるギリギリ感の表現はすばらしい。 登場するクライマーはUKローカルが中心で、ゲストでイタリアのミッシェル・カミナチやアメリカのアレックス・プッチョらもちらっと出演している。 制作を担当したOutcrop Filmsは昨年、無料でリリースして評判になった南アフリカ・ロックランズを扱った作品『Tomorrow I Will Be Gone』で一躍有名になったイギリスのメーカーで、今後が楽しみだ。

『WESTERN GOLD』 Savage Films

savagefilms.net

北アメリカ西海岸のボルダリングエリアを紹介した作品。メインはワシントン州のLeavenworthとカナダのスコーミッシュ。イマドキな高難度課題はないものの、紹介されている課題の質は高く、深い森のなかにポツンとある巨岩や、三峰を彷彿とさせる川原のツルツルなボルダーなど、種類豊富でアメリカの多様さがうかがえる。特に最後のスコーミッシュのハイボールとスラブ課題は、見ているほうも手に汗握る映像だ。 登場するのはローカルのクライマーが中心だが、大人な雰囲気を醸し出しているからか、アメリカのボルダー作品にありがちな派手なシーンは少なく、落ち着いた作品に仕上がっている。

『Welcome to the Hood』 PRAK Media

27crags.com/films

ポール・ロビンソンと、彼女であるアレックス・カーンのペアが中心となって編集しているPRAK Mediaの第2弾。ポールとダニエル・ウッズらが、昨年末から今年の年頭にかけて回ったスイス・ティチーノ、フランス・フォンテーヌブロー、オーストリア・ジルブレッタでのツアーを収録した作品。 見どころはフォンテーヌブローのユニークな課題群と、世界記録となったダニエルのEntlinge(V14/15)のフラッシュシーンだ。すでにベテランの域に達している若手クライマーたちの迫真の登りには圧倒される。

『Icon: Part 1 of the Iconic Series DPM CLIMBING

www.hdclimbingvideos.com/products/icon-part-one-iconic-series

コロラドのクラシックなスポートルートに焦点を当てた、一風変わった短編作品。アメリカの著名なクライマーを軸にしたシリーズの第1弾で、今作ではトミー・カルドウェル、ニック・ダットルと、最近頭角を現してきたジョナサン・シーグリストの3人が出演し、それぞれが各ルートへの思い入れや歴史、トライした経緯を解説している。 20分とやや短いのが残念だが、課題はどれも5.14台で、企画としてもおもしろく、続編が楽しみだ。

『The Bishop Dispatch Part1 & 2』 Rock Warrior Films

rockwarriorfilms.com/Home.html

アメリカ南部のボルダーエリアを中心にした映像作品を数多く制作しているRock Warrior Filmsの最新作。今作ではアメリカ最大のボルダーエリア、ビショップに1カ月滞在して撮って回った映像を、ふたつのパートにまとめている。 これまでの作品同様、とにかく収録している課題が豊富だ。しかも今回は、高難度課題も数多く詰め込まれている。「1」に収録されている、現在はガイドとして活躍するリサ・ランズ夫妻が飛び抜けて目立っている。ほかにも、いまだ再登者が少ないクラシック課題、イーサン・プリングルによるマンダラ・シットの完登シーンも見どころのひとつだろう。