シモン・ロレンジ、Alphane第4登 自らのSoudain Seulに匹敵する難しさとコメント

Steven Potter   climbing.com
訳=羽鎌田学

ベルギー人ボルダラー、シモン・ロレンジはフォンテーヌブローにあるSoudain Seul(別名Island Sit Start、V16またはV17)の初登者としてその名を知られているが、ショーン・ラブトゥがスイスのキロニコで初登しV17(9A)としたAlphaneをこの12月中旬に第4登し、2つの課題の難しさは同じくらいに感じていると語った。*

Alphaneは「完登まで、かなり時間がかかりました」と、シモンはclimbing.comに語った。今年の8月に初めて課題に対面した後、20回以上のセッションを費やしたと言う。これまでの再登者と同様、シモンはこの課題の難しさは個々のムーブにあるのではなく、登り方の切換えと繋げ方にあることに気付いたとも言う。確かに、彼はわずか5回のセッションで、この課題を2つのパートに分けて登ることには成功している。

 
 
 
 
 
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シモンは、今年、年明け早々の1月にフォンテーヌブローでBig Conviction(V16)を完登。その後、やはりフォンテーヌブローでLa Révolutionnaire(V16)、スイスのマジックウッドでPractice of the Wild(V15)、フィオネでFoundation’s Edge(V15)、ブリオーネでエイダン・ロバーツが3月に初登したばかりのEverything the Light Touches(V15)などを登り、Alphaneの第4登達成で素晴らしい一年を締めくくることになった。

シモンは、彼に先立つ再登者たちのムーブをミックスして課題を攻略した。序盤はエイダン・ロバーツが見つけ出した方法(ショーン・ラブトゥやウィル・ボシが用いた左足の薄いヒールフックではなく、両足のつま先を利用してのコンプレッション)で登り、上部の核心部は、パワーでねじ伏せるのではなく、チクタクムーブ風に手を細かく刻んで送ったショーンの方法に従った。「最初のパートが一番難しかったです」とシモンは言い、7手(中継ホールドも入れて)のV15課題のように感じたと付け加えた。

シモンの完登までのプロセスは、怪我によって2度停滞を余儀なくされた。1度目は原因不明の肩の神経障害で、突然1ヵ月間右腕を伸ばせなくなった。「理学療法も受けましたが、効き目はなかったようです」と彼は言う。「単にちょっと休んだら、治ったといったところでしょうか。1ヵ月後、簡単な課題を登り始めたら、その1週間後には、腕を完全に伸ばすとまだ少し痛みがありましたが、ほぼ元に戻りました。もちろん調子は万全ではなかったですが、また登れるようになってとてもうれしかったです」と、彼は語る。

そして、その肩の障害からの完全回復を目指している最中に、今度は左手人差し指を傷める。そのせいで、11月に2週間再びAlphaneのトライに出かけた時は、Alphaneのクリンピーな最初のパートには手を出すことができなかった。しかしながら、課題後半の調整には時間をかけることができた。ただ最後のトラバースまで続けてこなすことには苦労し、12月になって2週間のトライの末にやっと完登することができた。

「一緒に登っていた仲間のトマ・サラケノスと喋りながら、最後で落ちたら超ドジだろうな、と笑いながら話していました。Alphaneの最後のトラバースは簡単で、そこで落ちることはまずないだろう、と私自身ちょっと甘く見て何度か言ったこともありました。でも、その報いをしっかり受けましたよ。完登数日前に、私はまさにその通りの超ドジになってしまったこともありました」

「完登までのプロセスで一番苦労したのは、自分の努力ではどうにもならないことを我慢することでした」と、彼は説明する。先ず怪我、次に天候や指皮の状態。「何度か完登までもう少しというところで、悪天候が来たり、また指皮が裂けてしまったりして、数日間じっと我慢しなければならない時もありました。だから、合計で20回ちょっとのセッションが必要だったのです。でも実際に、スタートのパートからまともにトライできたのは、ほんの数回でした」

AlphaneとSoudain Seulのグレードは依然議論の対象になっている。Alphaneを第3登したウィル・ボシは、公然とダウングレードするつもりもないようだが、彼が今夏イギリスで初登したHoney Badger(V16)よりもある意味簡単だとコメントした。また、2度再登されたSoudain Seulは、再登者によってV16とV17に評価が分かれている。

正確なグレードはともかく、Alphaneは「難易度や長さはSoudain Seulにかなり匹敵する」と、シモンは説明する。

「Alphaneの難しいパートはSoudain Seulよりも少し短いのですが、指の強さがより重要になっています。一方で、Soudain Seulは、ムーブがもっとトリッキーでパワフルです。私にとっての両課題間の最大の違いは、Soudain Seulでは、完登するために全てがより完璧である必要があったということです。Alphaneでは、コンディションはそれほど重要ではなく、指の力さえ十分あれば、小さなミスなら許されます。そういう意味では、私にとってはAlphaneのほうが登り易かったです。いずれにしても、クライミングではいつもそうですが、難しさの評価にはスタイルが大きく絡んでくるでしょう」

これから最難課題に挑戦しようとするボルダラーたちへのアドバイスを求めると、彼は次のように語った。「楽観主義がキーのひとつになるでしょう。もっとうまくできる方法、もっとエネルギーを使わずに済むムーブは必ずあるはずです。悲観せずに、どんな小さなことでもいいですから、自分が磨きをかけることができる点を見つけることです。それは登りに神経を集中させるために大切です。失敗に惑わされることなく目前の問題をステップバイステップで解決していくことで、その一歩一歩が小さな勝利となり、やがて頂点へとあなたを導いてくれるのです」

そして、「次の目標は何ですか?」との問いに対し、彼はこう答えた。

「今年何本かのV15課題を短時間で完登できたことで、V15(8C)のフラッシングも可能なのではと考えるようになったのですが、いつか本気でそれにトライするのが夢です」

*すでにSoudain SeulはV17よりV16と表記されることのほうが多い。ということはAlphaneもV16である可能性が高くなったといえよう。

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