エリアス・ヤニェンマ
Burden of Dreams(9A)第4登

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ukclimbing.com
訳=羽鎌田学

3月26日、イタリア人ボルダラー、エリアス・ヤニェンマが、フィンランドのラップノールにあるBurden of Dreams(9A)の第4登に成功した。この成功により、エリアスは、9A/V17という世界最難グレードの課題を登った11人目となった。

これまでの同課題完登者は3人共、比較的単純なベータ(手順)を使っていたが、エリアスは2022年秋からのBurden of Dreamsへのトライ期間中を通じて、まったく異なる手順を選択した。

他のみんなと同じように最初のムーブで右手で1手目のエッジをとる。その後、エリアスはまだスタートホールドにある左手の横に左足のヒールをフック。続いて、他の人は右手のエッジに左手を寄せてマッチするが、彼はそのエッジの左横にある中継ホールドを左手で一旦押さえてから、その左手を一気に最後から2番目のエッジにクロス気味に伸ばす。

次に、右手を胸の前にある左手で使った中継ホールドまで戻して体の振れを抑えながら左足のヒールを外し、両足を新たなフットホールドに置き直す。そして、先ほど左手で捉えた最後から2番目のエッジで右手をマッチさせ、最終的に左手を頭上の事実上最後のエッジに飛ばす。その結果、体が派手にスイングして岩から引き離されてしまうのだが、次のムーブ、左手のエッジの右方向にあるリップを捉える右手のコーディネーションでそのスイングをコントロールするのだ。

エリアス・ヤニェンマの手順は、初登者のナーレ・フッカタイバルやその後の2人の再登者の手順よりもはるかに複雑に見えるうえ、必要なムーブという点で、2つのアプローチは似て非なるものである。

例えば、ナーレと第2登したウィル・ボシの場合、両者は実質計6回手を移動させ、5手目はボルダーのリップ下のエッジへの右手の飛ばしで、6手目は同エッジへ左手を寄せる比較的簡単なマッチになっている。

エリアスのアプローチでは、手の動きが1つ増え、6手目でナーレらが最初に右手で捉えたエッジへ左手を飛ばすムーブでも、また7手目のすかさず右手をリップへ持っていくコーディネーションムーブでも、共にフォールの可能性が高そうだ。

その反面、エリアスの手順では足や体幹にはそれほど負担がかからないかもしれない。指への負担はより大きく、また成功の確率が低いアプローチにはみえるが。その他、ウィル・ボシの登りで必要な6回の足の動き(そのうちの4回目はウィルにとって核心であったという)と比べて、エリアスのアプローチでは、足の移動は僅か4回、またはヒールフックの解除を含めても5回の足の動きが必要なだけである。

いずれにせよ、Burden of Dreamsは4人目の完登者を迎えたことになる。以下は、エリアスが完登直後にSNS上で語ったことである。

「なんて素晴らしい夜だ、やっとすべての努力が実を結んだんだ!今の気持ちを言葉で言い表すことなんてできない。夢が叶ったんだ。僕を信じてこの完登までの道筋でサポートし続けてくれた妻のステファニア・コロンバ、そして家族のみんな、本当にありがとう!」

今年28才のエリアスはこれまでに8C+課題を2本登っているが、直近のそれは、2年前、2022年2月にイタリア中部にあるボルダリングエリア、ティントラーレで初登したイタリア最難ボルダー課題の一本と目されるGaneshだ。彼のBurden of Dreams完登動画は、今後数ヵ月以内に公開される予定だという。

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