韓国のイ・ソンス、Burden of Dreams(9A/ V17)を第5登

gripped.com 
訳=羽鎌田学

2025年5月12日、韓国人クライマー、イ・ソンスが、世界最難課題であるBurden of Dreams(9A/V17)の第5登に成功した。

Burden of Dreamsは、フィンランドの首都ヘルシンキ東方100kmほどのところに位置するラップノールと呼ばれる場所にあり、2016年10月に地元フィンランド生まれの世界的ボルダラー、ナーレ・フッカタイバルによって初登された課題だ。それ以前にはラップノール・プロジェクトと呼ばれていたその課題に、ナーレは、初登までに4年の歳月を費やした。

この課題に、イ・ソンスは苦戦した。ある日のトライでは実に完登寸前まで迫ったものの、最終ホールドにマッチした途端にフォール。また、その後の5月10日のセッションでは、課題を登りきったものの、後になってビデオを見ると、シットスタート直後にTシャツの裾がパッドに触れていることに、彼は気づいた。シットスタートでパッドから尻を離した後、右手を次のホールドに飛ばす前に、反動をつけるために一度腰を落とした。だが、その腰を落とした時に、着ていたTシャツの裾(そしておそらく尻も)がパッドに触れていたのだ。

ダブ(身体、着衣が課題と関係ないところに接触)した時も、両手はスタートホールドにあり、まだスタートポジションにいたため、彼の最初の完登をSNSで知った多くのクライマーたちは、彼の完登は有効だと考えた。しかし一方で、ダブはダブだと主張する人もいた。いずれにせよ、より良いスタイルで夢の課題を登りたいと考えたソンスは、後日もう一度トライすることにして、2日後の5月12日に、そのとおりに非の打ちどころがない完登に成功したのだった。

Burden of Dreamsは、ソンスにとって、初めてのV17(9A)課題となった。V16課題では、2024年12月下旬、米国カリフォルニア州ビショップのバターミルクでダニエル・ウッズ初登のThe Processを完登。また、同2024年には、V15課題も多数登っている。例えば、4月に瑞牆で室井登喜男初登のアサギマダラ(五段+)を、夏には南アフリカ、ロックランズへのツアーで、Monkey Wedding、Spray of Light、The Smile、そしてナーレ・フッカタイバル初登の見事なハイボール課題、The Finnish Lineを完登するなど、目覚ましい成果を挙げている。またThe Processと同時期のビショップ・ツアーでは、ポール・ロビンソン初登のLucid Dreaming(V15)もゲットしている。

1999年4月生まれで今年26歳のイ・ソンスは、リードクライミングでは、2024年の11月にスペインのマルガレフで5.15a(9a+)のFirst Leyを登っており、またコンペでも、ユースの時代から韓国チームの一員として数々の国際大会に出場し活躍している。

2016年にナーレ・フッカタイバルが初登して以来、Burden of Dreamsは6年以上もの間、再登されずにいた。その間、ダニエル・ウッズ、ショーン・ラブトゥ、ステファノ・ギゾルフィといった数々の世界トップクラスのクライマーがこの課題にトライ。そして2023年4月に、ウィル・ボシが以前にトライしていたショーンとほぼ同じ手順、ムーブで、待望の第2登に成功。その後、2023年12月にシモン・ロレンジが第3登、2024年3月にエリアス・ヤニェンマが第4登している。

第3登したシモン・ロレンジは、それまでの完登者であるナーレやウィルと異なる、新しいムーブを採用。彼は、ナーレやウィルのように最初のムーブで右手を飛ばして取るホールドに左手をマッチするのではなく、右手で最初のホールドをキャッチした後、左足の深いドロップニーで左腰を壁に近づけることにより、マッチをスキップし、左手を直接頭上のガストン・クリンプホールドへと伸ばすことができた。ソンスも、このドロップニー・ムーブを使って登っている。

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