セブ・ブワン、中国最難ルート、El Gran Cabrón(9b/5.15b)初登

訳=羽鎌田学

2月初旬、中国で、フランス人クライマー、セブ・ブワンがプロジェクト・ルートであったEl Gran Cabrónを初登し、9bとグレーディングした。中国最難ルートの誕生である。このルートは、中国南部、ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区河池市鳳山県の社更穿洞(シュアガン・チゥアンドン)にある。

このケイブは、2024年初頭にひとりのあるローカル・クライマーによって注目され、その後、地元と海外のクライマー達の大変な努力によって開拓されたエリアである。そして今や中国最難ルート誕生の地となった。しかし、そこには、まだまだ中程度から高グレードのルート、プロジェクトがひしめいている。今冬、セブは中国を訪れ、その文化を体験し、中国におけるクライミングのポテンシャルを探り、且つ高難度ルートを確立した。

以下はセブのコメントである。

「何百もの素晴らしいケイブや壁に囲まれて、まるで遊園地のど真ん中に迷い込んだ子供のように、完全に圧倒されて立ちすくんでいました。どこを見ても、私は驚くばかりでした。そのうえ、まだまだ発見されていない場所が無数にあることを知り、一層信じられない気持ちになってしまいました。ケイブも、手付かずの壁も無数にありました。その中から自分に気に入ったものを選ぶだけでよかったのです。それは、冒険、発見、新しい経験に満ちたスリリングな毎日でした。

もちろん、プロジェクト・ルートは登り放題でした。私は、まったく未知の文化に浸り、目新しいものを次々と吸収していく気分でした。そして、疑念とフラストレーションを乗り越えて、自信と喜びを手にすることができました。今は、ついにEl Gran Cabrón(5.15b)を初登できて大満足です。

当初、中国に着いた時、どんなことを期待していいのかも見当がつきませんでした。結果、一本のプロジェクトに出会い、素晴らしい環境の中でそれにチャレンジできたことは、貴重な経験になりました。中国は誰にとっても興味深いところになるはずです。私は今回の旅でいろいろな意味で自分の視野が広がったような気がしています。遠隔の地、馴染みのない文化、初体験の生活様式に私は驚かされ、同時に混乱しました。それらを受け入れながらも、新たな疑問も生まれ、日々の発見がさらにエキサイティングになっていきました。

ここに足を踏み入れた時、目にする多くのケイブに完全に圧倒されました。しかし、ハードで刺激的なルートに出会えるかどうかはまだわかりませんでした。手始めに、社更穿洞(シュアガン・チゥアンドン)というケイブで登ることにしました。そこは、すでにローカル、および海外のクライマー(トニ・アルブネッス、ダビッ・ガンブース、ダニエル・アンドラーダ、ジョナタン・フロールら)によって開拓が進んでいたエリアでした。

そのケイブで、私は真っ先に昨年の春にダビッ・ガンブースがボルトを打ったプロジェクト、El Gran Cabrónを見に行きました。最初はすべてのムーブを想像できませんでした。信じられないほど複雑なパートが多く、様々な方法に思いを巡らせなければなりませんでした。岩の質とクライミングのスタイル、ムーブには大いに驚かされました。ルートは実に美しく、とても楽しいクライミングでした。核心のパートには、私のお気に入りであるピンチや非常にフィジカルなムーブがありました。

ルートの内容は、先ずは7c+/8aのパートを登り、その後7B+のボルダームーブをこなして、ニーバーレストに入ります。次は、8A/+のボルダリーな核心です。縦ホールドとピンチを使ったすごく面白いムーブがあり、それはまさに私が得意とするスタイルのものでした。その後、わずかにレストできるところがあって、次に7B+/Cのトリッキーなボルダームーブが続きます。そこでは、ちょっとしたミスから5回ほどフォールしてしまいました。最後に、RPトライの時に一度フォールしてしまった7A+のボルダームーブをこなして、最終ホールドとなるジャグを掴んで終わりです。

地元の人達の素晴らしいおもてなしと、ローカル・クライマー達が岩場の開拓整備のために注ぐ尽力に心から感謝します。皆さんの素晴らしい仕事に、ブラボー!」

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