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セブ・ブワン、Suprême Jumbo Love初登。米国最難5.15c
ANTHONY WALSH climbing.com
訳=羽鎌田学
11月1日、フランス人クライマー、セバスチャン・ブワンがカリフォルニア州モハビ国立保護区内に位置するクラークマウンテンでSuprême Jumbo Love(5.15c)を初登した。この70mあまりのルートは、彼が10月19日に計10日間の努力の末に第4登したJumbo Love(5.15b)のダイレクトスタート版であり、セブの初登により米国最難ルートとなった。
Suprême Jumbo Loveは、20mほどの5.14dを登った後、まさにJumbo Loveの核心が始まるところでオリジナルラインに合流する。プレスリリースでセブは、Jumbo Loveを登ることは12歳でクライミングを始めた時からの目標だったと述べ、「そんなルートのダイレクトスタートをこのツアーの最後に初登できて、もうこれ以上のものは望めない。完璧なツアーになった」と言う。
Photo: Clarisse Bompard
セブは、「実に長い努力」を要するルートとSuprême Jumbo Loveを表現する。Jumbo Loveのスタートのパートは5.13a/b相当であるが、それを5.14dのパートに置き換え、合流直後にJumbo Loveの核心部に入る。そこでは、正確且つボルダリーなポケットの引き付けが必要で、さらにJumbo Loveの真骨頂がやってくる。それは「紛れもなくフィジカルでパンピー」なパート。そして最後に20mほどの不明瞭なテクニカルなスラブがあり、そこでセブはトライの際に2度落ちている。「最後のスラブはそれほど難しくはないが、そこまで登ってきて、手順がよくわかっていなければ、いとも簡単にフォールしてしまう」と、彼は説明する。
セブがダイレクトスタートからJumbo Loveに繋げて入ることが初めてできたのは、ある日の3回目のトライだった。しかし彼曰く、あのように長大なルートの残りのパートを登り切るチャンスは、すでに彼にはなかった。しかし、その時のリンク成功は大きな意味を持っていた。レッドポイントの際に何が必要なのか、それを彼は知ることができたのである。ルートを最後まで登り切るチャンスをものにするためには、十分な体力が不可欠で、そのためには一日の最初のトライでダイレクトスタートとJumbo Loveの核心部を繋げて登らなければならなかった。
「時には、自分の調子、天気、雰囲気、友人、カメラマン、運、すべてがうまく揃うことがある」と、ブワンは語る。「滅多にないことだが、そのような時を経験できたことに大変感謝している。このルートの歴史、グレードについての考察、そしてここでの冒険談については、また後日に。今は、シュプレーム・ラブ(至上の愛)を味わおう!」
Jumbo Love史
1990年代半ばにランディ・リービットによって3ピッチのルートとしてボルトが打たれたJumbo Loveは、2000年代半ばにクリス・シャーマが長大な1ピッチのルートとして登ることを思いつくまで、ほとんどトライされることもなかった。全長80m弱、そのほとんどが圧倒的に被っている壁に引かれたラインだった。2007年の間中、クリス・シャーマとイーサン・プリングルは初登を競い合ったが、その年は共に失敗に終わった。翌年、プリングルは相次ぐ怪我で初登争いから脱落したが、クリスは再び岩場に戻り、数週間取付きで暮らしながらトライした。
彼がついに初登に成功した時、Jumbo Loveは、スペイン人クライマー、ベルナベ・フェルナンデスのChilam Bilam(2003年初登、当初5.15c。その後5.15a/bにグレードダウン)や、やはりスペイン人クライマー、ダニエル・アンドラーダのAli Hulk Sit Start Extension(ニーパッドのおかげで、現在5.15a/bと推定)と並んで、当時世界でわずか3本しかなかった5.15b以上の難しさのルートの1本となった。(トミー・コールドウェルが2003年にコロラドで開拓初登したテストピース、Flex Lutherは最近5.15bにグレードアップされたが、トミーが初登した際のグレードは正確には不明となっている)