セブ・ブワン、クリス・シャーマのJumbo Love 9b再登

planetmountain.com 訳=羽鎌田学
写真=Clarisse Bompard

フランス人外岩クライマー、セバスチャン・ブワンが、アメリカのクラークマウンテンで、2008年にクリス・シャーマが初登した9b/5.15b、Jumbo Loveを再登した。

2022年10月19日、セバスチャン・ブワンは米国カリフォルニア州、ネバダ州との州境近くに位置するクラークマウンテンで、滅多にトライされることのないJumbo Loveの再登に成功した。ランディ・リーヴィットが最初にボルトを打ち、2008年にクリス・シャーマが初登したこのルートは、当時アメリカ最難ルート、世界初の9bルートとなった。初登7年後の2015年にイーサン・プリングルがネバダ州ラスベガスを見下ろす山中にある、この長さ80m弱のとてつもなく長いラインを第2登、その後2018年にジョナサン・シーグリストが第3登。今回無事に終了点にクリップした4人目となったセブは、次のように語っている。

「ずっと心に描いていた夢が、先週の水曜日に遂に実現した。このキングラインは、長い間私を魅了し続けてきたのだ。ビデオでクリス・シャーマがJumbo Loveを登るシーンは、本当に刺激的だった。私は2005年頃からクライミングを始めたが、当時見たクライミングビデオの中で最も素晴らしいもののひとつだった。

Jumbo Loveは、私が好むクライミングのすべてを体現していた。モハビ砂漠のど真ん中に聳える、オレンジ色の非の打ちどころのない巨大な強傾斜壁にそれはある。そのラインと、それが引かれた壁は、まさに私のクライミングスタイルに合致するものであることは、一目瞭然であった。そんなルートをいつかは登ってみたいと、数年前からこの時を待ち望んでいたのだ。そして、私は期待を裏切られることはなかった。Jumbo Loveは、完璧なムーブを持つ素晴らしいラインだ」

セブがすぐに気づいたように、このルートを登るには、絶大なパワーと万全の技術以上のものが要求される。

「Jumbo Loveは単なるハードなラインではなく、まさに冒険そのもの。車でのドライブ、オフロード走行、徒歩でのアプローチなど、すべてのプロセスを完全に見くびっていた。岩場まで行くのに役立たないということで車を3回取り換えたり、またオフロードを走っていてアクシデントに見舞われてタイヤを2本交換したりするはめにもなった。そして1時間のハイキングは、実に疲れるものだった。私は普段は何日も続けてクライミングすることが多い。でも、ここでは、それは大間違い。レスト日を挟むことも重要で、体力を温存しなくてはならない。そして、エネルギーとモチベーションを維持しなければならないのだ。毎日運転するのを避けるために、砂漠で何度か寝たこともある。そしてトライ10日目に、やっとJumbo Loveを完登できた」

RPに際し、セブはニーパッドを装着したが、「Iron CurtainやChangeのように、ニーパッドのせいでグレードが大きく変わるということはない。Jumbo Loveは、それを使おうが使わまいが、同じ難易度に留まると思う」と説明する。ともあれ、29歳の彼は、「実に見事なルート」と言う。そして、「ランディ・リーヴィットは既に90年代にこのようなラインを見い出し、ボルトを設置するという、信じられないほど斬新なビジョンを持っていたのだ。そんな未来的なビジョンとライン、そしてインスピレーションを与えてくれたクリス・シャーマとリールロックに感謝する」と、話を結んだ。

セブ・ブワンは、今年の4月末にはフランスのヴェルドン渓谷で未来のハードルートの一典型となるだろう9cルート、DNAを初登。7月にはノルウェーのフラタンゲルで130mのNordic Marathon(9b/+)を初登し、そしてIron Curtain(9b)を第2登。8月には、同地でChange(9b+)を第3登している。

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