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『倉上慶大スライド&トークショー』イベントレポート

2019年8月14日

文=筑後 昭久(ジャムセッション三鷹 店長)

瑞牆山の高難度マルチピッチ「千日の瑠璃(5.14a R/X)」開拓・初登、世界初の「ロープソロ」による“The Nose”の登攀や、同じくロープソロによるMare(5.14c)登攀など、これまで誰も成し得なかった登攀を次々と達成し、日本のみならず世界を驚かせている倉上慶大氏。

2019年6月19日、ジャムセッション三鷹で行われたスライド&トークショーで、これまでのクライミングを振り返りながら自身の《スタイル》について語ってくれた。今回はその中でも特に印象に残った部分について紹介したい。

《そのスタイルでは登れない》、という恐怖と戦っていた

向き合うリスクと、現在の己の力量をはかり、どんなクライミングスタイルで挑むか悩んで選択する…その時間が何よりも大切だという。 グラウンドアップ、ロープソロ…どのようなスタイルでそのラインを登るのか、上からロープを垂らし、ボルトを打てばきっと登れるだろうと思うこともある。だが、それで果たして自分は後悔しないだろうかと、挑む岩の上で悩み続けたこともあるそうだ。

しかしそんな悩んでいる時間が、登る時間よりも好きで大切だという。スタイルにこだわって登れなければ、やはり後悔するかも知れない。悩みの中でときには妥協もあったが、悩み尽くしてからの妥協もわるくないと言う。

「スタイルを選ぶことは、リスクを選ぶことなんです」

ここ最近の活動で目立つのは「ロープソロ」というスタイル。ビレイヤーがいないという事は、単に落下時にロープで止めてくれる人がいないだけでなく、そのシステムの構築に費やす手数が増えることで登攀自体の負担も多くなり、リスクは当然高くなる。 しかし倉上氏は「マットやパートナーやロープといったものが一つ少なくなれば、それだけ岩を見る目が養われる」と言う。

昨年、世界で初めてヨセミテの”The Nose”(ノーズ)のロープソロに成功したことは大きなニュースになった。フリーで登っているのも、先にはわずか4人しかいない(初登はリン・ヒル)。

倉上氏のすぐあとには最年少15歳のコナー少年がフリーでの完登を果たして、共に大きなニュースとなったが、コナー少年はノーズ登攀後に、そのまま終了地点にある木にも登ったそうなので、「そのラインはたぶん世界初」。 ヨセミテ滞在中、壁の中でノーズ初登者であるリン・ヒルとも会ったというエピソードも話してくれた。

ノーズのロープソロに向けては、ボルダリングサーキットが効果的だったそうだ。 毎回、次の岩まで走って移動することで心肺能力も鍛えられたし、多くの場合、マントルを返す必要があり、その大変さが精神的にも鍛えられたとのこと。

ノーズの後には安間佐千氏が初登した二子山の「Mare(5.14c)」をロープソロして再び日本中を驚かせたが、今後5.15のルートを目標とすることはしないという。 ロープソロは、ギアを扱う技術と登攀能力が最大限に試されると語る倉上氏は、数年前まで「ロープを持つと”ただの人”」と揶揄されていたという。当時はボルダリング中心のクライミングで、は2014年には黒本の全課題をトライし登り切った。

ボルダリングからトラッドクライミングへ

「ボルダリングからトラッドへの移行期間がすごく短かったのでは?」という質問に対しては、「同じクライミングだし、そんなにハードルを高く設ける必要はないと思う」と答えている。

トラッドには精神面と技術面が必要だが、精神面についてはボルダリングを取り組んでいたことで鍛えられていたという。技術面についてはエイドクライミングで一人で色々と試したこと、恵まれていた点としては佐藤裕介氏と一緒に登ったことで、フォローの際にギア回収などで学べた部分も大きいということだった。

イギリスでのトラッドクライミング

現在はイギリスのトラッドに興味が向いているという倉上氏だが、イギリスでは1ピッチのルートであってもパートナーがフォローで登り、ギアのセット状態などについてあとで深く話す文化があるらしく、それがとてもよかったとのこと。

トポにも初登のリードとフォローの名前が記載されており、パートナーとルートを共有でき、共に成長できる下地になっているのではないかと推測する。 また、トポにはルートの内容についての情報がほとんどなく、冒険的要素があるところも特徴のようだ。イギリスの岩場は基本トラッドとなるが、グレード表記もトラッドクライミングに適応した難易度が使われる。倉上氏からもスライドを用いて細かな説明がされた。

※ここでは詳細を省くが、他の国で一般的な「難易度」と併せて「危険度」の表記があるイメージ。ROCK & SNOW77号にも英国クライミングの特集が組まれている。

イギリスで倉上氏が感じたことのひとつとして、クライミングに対する認識の違いがある。

あるルートをトライしていると、すぐ下を先生に引率された子供達が遠足か何かで通りがかり、クライミングしている様子を眺めていたそうだが、プロテクションが悪く、落ちたら絶対にグラウンドするような危険度の高いルートだった。

日本なら子供達の見える場所でそのような危ないルートは許容されない可能性が高いが、イギリスではそういったクライミングが孕むリスクが一般人にも共有されているとのことだった。

倉上氏の頭の中には、いくつかのプロジェクトがある。 いまはイギリスのトラッドをもっと知りたいという。 それとあわせて開拓もしていきたいという思いを教えてくれた。

倉上慶大氏 略歴

1985年 群馬県生まれ 2014年 小川山 / ボルダー 黒本掲載の全458課題完登
2015年 瑞牆 / 十一面岩正面壁「千日の瑠璃」(5.14a R/X)初登
2016年 小川山 / 覚醒(V14) 第2登 2017年 湯川 / 燈明 (5.13d/14a R) 初登
2018年 ヨセミテ エルキャピタン / The Nose (5.14a) フリー第5登、同年ロープソロ初登
2019年 二子山 / Mare (5.14c) ロープソロ

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