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アンガス・キル、世界最難のスラブルート
The Meltdown(9a/5.14d)を第4登
Xa White UKC 訳=羽鎌田学
6月初旬、英国人クライマー、アンガス・キルが、ウェールズのトゥル・マウルにあるThe Meltdown(9a)を第4登した。
最難スラブルートとして有名なThe Meltdownに、かつてイギリスクライミング界の第一人者のひとりであったジョニー・ドーズがボルトを打ったのは、1985年のこと。しかし、2012年にジェームズ・マカフィーが初登するまで、ほぼ30年間近く未登のままで残されていた。ジェームズが初登した後もグレードがはっきりと確定されることはなかったが、現在では一応8c+/9aで落ち着いているようで、アンガスもこのグレードに同意している。
再登は主にトップクラスのトラッドクライマーによって行われており、2018年5月下旬に第2登したスペイン人クライマー、イグナシオ・ムレーロは、今春にはフランス、アノでLe Voyage(E10)を再登し、またスペイン、マドリッド近郊の岩場ラ・ペドリッサで自身が設定した複数の8c+トラッドプロジェクトを初登するなどの実力を持つクライマーである。
また2022年3月上旬に第3登したフランコ・クックソンは、Nothing Lasts(E11 7a)、Immortal(E11 7b)などのE11ルートに初登者としての名を残し、当時、8台のスポートルートを登った経験もないまま、いきなりThe Meltdownの再登に成功して話題になった人物である。
今回アンガスはシーズン終盤に再登に成功したが、すでにスレートの岩は温まり、小さなフットホールドがさらに当てにならなくなっていたため、たとえば気温が低い時には「簡単」だと感じていたムーブで、最後の核心をこなした後に何度もフォールしてしまった。そのため、アンガスは「ムーブとムーブの間のチョークアップポイント」を定めたり、「温まった岩に足を少しでも確実に決めることができるようにするための微調整」を施したりと、いっそう詳細な手順を組み立てる必要に迫られた。再登に成功したトライの際にも、途中、最後のランナウトの前に、ズルっという足が外れる派手な音を耳にして、肝を冷やす羽目になったと言う。アンガスは、SNS上でさらに詳しく説明し、次のように語っている。
「The Meltdownの最後のハードムーブで5回落ちた後、もっとストレニュアスにはなってしまうのですが、より確実な方法に替えました。昨日は、そのパートでズルっと足が外れる音がするまでは、すべてのハードなムーブをスムーズにこなして登っていました。もちろん、その足が滑る音を耳にした時、レッドポイントの最後のチャンスを絶対に無駄にするものかと思いました。ただ指をかなり痛めたようで心配になって、ランナウトする最終パートは、事実上その一本の指を使わずに登りました。この特徴的な岩に引かれたルートを登り切るまでの過程は、本当に大変なものでした。反省すべきことは山ほどあり、また学んだこともたくさんあります。今は、痛めた小指のケアをしながら、応援してくれた人たちに感謝の気持ちを伝えたいと思います」
アンガスは、特にクライミングシューズのリソールサービス“Llanberis Resoles”に大いに感謝している。Llanberis Resoles社は3度にわたって彼のシューズを修理し、鋭いエッジと硬いつま先を保ってくれたからだ。