クライミング人口の増加に伴い、コンペも盛り上がりをみせています。編集部によるアンケートでも、約半数以上のクライミングジムで開催されていて、コンペに対して意欲的なジムも増えてきています。
コンペの形式も日々進化しており、真剣に実力を試すものからお祭りのような感覚でワイワイと参加できるものまで、一口にコンペといっても種類は様々です。
しかし初心者向けもあるとはいえ、まだ参加したことのない方からすれば、ハードルが高いと思われることも多いのではないでしょうか。
今回はコンペがどのように開催されているのか、実際のコンペの1日をお届けします。
東京ドーム「スポドリ!」様にご協力いただき、コンペに潜入取材しました。
基本的にコンペは予選→決勝の流れで進んでいきます。タイムスケジュールにそって、コンペの一日をみてみましょう。こちらがコンペ当日のタイムスケジュールです。
朝8時に受付が開始。開場と同時に多くの人が並んでいます。コンペ当日は早めの時間にきて、ストレッチをしたりコンディショニングを整えている方が多いようです。
受付では簡単な説明とタイムスケジュール、ジャッジシートをもらいます。ジャッジシートは予選で使うので大切に持っておきましょう。受付が終わり次第、そのまま更衣室へ移動し荷物を置いて着替えをすませます。
受付が終わると、開会の挨拶とルール説明です。コンペによってルールが異なることも多いため、事前に説明が行なわれます。
スポドリ!コンペの詳細は以下のとおり。
「カテゴリー分けはせず全員でセッションを行ない、各グレードに付いたポイントの合計で競う。」
「予選の総合順位をもとに参加者総数をほぼ等しく3つに分け、上級・中級・初級とする。各カテゴリー上位7名が決勝進出。ただし、得点に大きな開きがある順位でカテゴリーを区切る場合あり。」
参加者全体の総合成績をもとにカテゴリー分けがされるため、上級カテゴリー以外の決勝進出者は、運の要素が強くなっています。
ルール説明が終わり、いよいよ予選がスタート。予選では好きな壁の前に並び、順番がきたらトライをしていきます。壁によって並んでいる人数に差があるので、空いている壁を選べばその分トライ数を増やすことができます。
連続でトライすることはできず、一度トライしたら並び直さないといけないため、登る前に入念なオブザベーションが必要とされます。
グレードによって獲得ポイントが変わるため、どのグレードの課題から落としていくのか。戦略を練りながらトライしています。
予選は75分間で、電光掲示板でタイムが表示されています。
予選が終わり、決勝進出者の発表です。発表は掲示板に張り出されます。
スポドリ!コンペでは決勝サドンデス方式を採用しています。詳細は以下のとおり。
決勝進出者7名で1課題目をトライし、上位5名が2課題目に進む。
・同様に2課題目を5名でトライし、上位3名が3課題目に進む。
・3課題目を3名でトライし、上位2名が決勝課題に進む。
・決勝課題は1対1で最高到達点を競い順位を決定する。
・各課題3分(オブザベーション含む)で完登数および最高到達点で競う。
※最高到達点が同じ場合は、予選の結果をもとに順位を確定。
サドンデス方式は課題が進むごとに選手が減っていき、最後は一対一で到達高度を競い、優勝者を決定します。
決勝進出者はオブザベーションタイム以外では課題を見ることができません。そのため、決勝戦が始まるまでアイソレーションルームと呼ばれる「隔離」場所で待機となります。
選手たちがアイソレーションルームで待機している間に、セッターが決勝課題をセットしています。
決勝課題のセットが終わり、いよいよ決勝が始まります。決勝戦は初級→中級→上級の順番で行なわれます。
選手は順番に呼ばれ、待機している間は課題を見ることができないように壁に対して後ろ向きで座っています。
また、惜しくも予選落ちしてしまった選手は、そのまま会場で決勝出場選手の応援にまわります。競技中はセッターによる実況解説もあり、会場も大盛り上がり。
持ち時間はひとり3分で、時間内なら何度でもトライをすることが可能です。背後にある電光掲示板で時間がカウントされているので、闇雲にトライをするのではなく、レストを挟みながら時間配分を考えるのもコンペならではの戦略です。
初級の決勝が終わり、次は中級の決勝です。初級と同様、アイソレーションで待機している間にセッターが決勝課題をセットします。
中級カテゴリの決勝が始まりました。課題の難易度も段々と上がっており、選手達も力を振り絞ります。
中級カテゴリではコンペ慣れしている選手も多く、休憩を挟み時間配分を考えながら戦略的にトライをしています。
いよいよ上級カテゴリーの決勝です。上級は70人のコンペ全参加者のうち上位7人によるトライとなり、一段と緊張感が増していきます。
ついに上級カテゴリーが始まりました。序盤からハードなムーブが連続し、会場の応援も熱が入ります。
そして、3課題目を終え残ったのは予選を1位と2位で通過したふたり。最後の第4課題で勝負が決まります。
決勝最終課題の雰囲気は動画でお楽しみください。※音声が流れます。音量にご注意ください。
音声付きでみると、会場からの大きな声援が聞こえます。見事第4課題を一撃し、会場もこの日一番の盛り上がりをみせます。
なんとこの後に続いた選手も同じく一撃で登りきり、最終課題で決着がつかず。急遽、レギュラーテープの課題で1トライ限定の延長戦に。そして接戦の末、優勝者が決定しました。
最後に表彰式が行なわれます。表彰式では、各カテゴリーの決勝進出者全員に賞品が贈られます。また、決勝進出者だけでなく、セッターによるセッター賞もサプライズで発表されました。
そして、残った参加者全員で記念撮影。
終了後もそのまま登ることが可能で、多くの人がコンペ中に落とすことができなかった課題や、決勝課題にトライしていました。
コンペ歴:はじめて
ボルダリング歴:1年
最高グレード:4級
ーーコンペに出場しようと思ったきっかけは何ですか?
スポドリ!がホームジムで、スタッフの方にオススメいただいたのがきっかけです。勝つことよりもコンペの雰囲気を楽しもうと思ってエントリーしました。
ーー出場してみて、どうでしたか?
自分が登れる登れない関係なしに、上手い人の登りを見ることができたり、緊張感がある中で他の人の登りを応援するのが楽しかったです。
普段はそんなにオンサイトを意識しませんが、オンサイトしないといけない緊張感はコンペならでは。決勝には出れませんでしたが、応援しているだけでもすごく楽しかったです。
最初はコンペに出場するのはすごく躊躇していましたが、実際に出てみたらみんなから応援をしてもらえたり、また自分が応援するのは凄く楽しかったです。まだ参加したことのない人はぜひ一度、この一体感を経験してみて欲しいです。
コンペ歴:2回目
ボルダリング歴:1年半
最高グレード:2級
ーーコンペに出場しようと思ったきっかけは何ですか?
先輩に誘われたのがきっかけです。
ーー出場してみて、どうでしたか?
とにかく楽しかったです。決勝では最後まで残ったのですが、直前の第3課題で力を使い果たしてしまい、最終課題ではゴール手前で力尽きて落下してしまいました。優勝はできませんでしたが、最後の二人まで残ることができたのは良かったです。
コンペ歴:5年目、出場多数
ボルダリング歴:6年
最高グレード:1級
ーーコンペに出場しようと思ったきっかけは何ですか?
セッターの遠藤さんの講習を受けていたのがきっかけで、スポドリのコンペ自体も今回が3回目です。
ーー出場してみて、どうでしたか?
普通に楽しかったです。もっと頑張りたいなと思いました。本当は上級カテゴリを狙っていたのですが、うまくいきませんでした。今回はアップができなくて、いきなり予選だったので難しかったです。
コンペは自分の実力がわかるので、参加すればするほどもっと頑張ろう、と向上心を持つことができます。特に決勝では緊張しますが、その緊張感も普段では味わえないもので、すごく楽しいです。
コンペ歴:多数、スポドリ!4回目。
ボルダリング歴:7年。
最高グレード:初段、外岩2段。
ーーコンペに出場しようと思ったきっかけは何ですか?
なんとなくです。友達と出てみようかなと思って出場しました。
ーー出場してみて、どうでしたか?
とにかく面白かったです。スポドリ!のコンペはお祭りのような感じに近いです。参加者全員で盛り上がれて、熱量が高くすごく良い雰囲気でした。コンペはいろんな人の動きを見ることができて、同じ課題でも人によってムーブが違い勉強になることが多いです。
そんなに凄く登れなくても、出場しようか迷っている方は、お祭りに出るような気分で気軽に出てみてもらいたいと思います。
今回、参加者の方に話を聞いてみたところ全員が「出て良かった、楽しかった」と感想を口にしていました。初めて出場するときは緊張するかもしれませんが、いざ出場してみるとコンペ特有の空気が病みつきになるという方も多くいらっしゃいます。
コンペに出場する目的は「優勝するため」や「自分の実力を知るため」、「雰囲気を味わうため」といったように人それぞれ。気負いすることなく、まずは気軽にエントリーしてみましょう!
公式Facebookページにコンペ前のセットの様子や詳しい情報がアップロードされています。興味のある方はぜひご覧ください。
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