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ウィル・ボシ、イタリアのアルコでExcalibur(9b+/5.15c)第2登
planetmountain.com
訳=羽鎌田学
2025年2月3日、英国スコットランド出身のウィル・ボシが、イタリアのアルコ北東に位置するドレーナ村の岩場にあるExcaliburの第2登に成功した。40度前傾した壁に位置するこのルートは、当初ローカルクライマーであるクリスティアン・ドリガッティとモーリス・フォンタナーリによってボルトが打たれ、奇しくも2年前の同日、2023年2月3日にステファノ・ギゾルフィによって初登され、9b+とされた一本である。これによって、Excaliburはイタリア最難ルートとなり、世界的にも最もチャレンジングなルートのひとつとなっている。
Excaliburを際立たせているのは、そのユニークな特徴である。今日、9b、9b+、そして9cといったグレードの範疇にある他のほとんどのルートは、長くて持久力を必要とする傾向がある。それに対して、Excaliburは短いながらも非常にハードなルートである。極小エッジを特徴とするこのルートでは、新たなレベルのパワーと精度が要求される。アダム・オンドラ、ヤコブ・シューベルト、ショーン・ラブトゥ、ヤナ・シュベツォヴァーなど、世界トップクラスのクライマーたちがトライしたにもかかわらず、今回ウィル・ボシが成功するまで、このルートは一度も再登されていなかった。
ウィル・ボシは、2022年後半、ルートがまだプロジェクトであった時に、トライを始め、Excaliburに計21回のセッションを費やした。しかし、彼は次のように指摘している。「コンディションが悪くて、まともにトライできたのは、10セッションぐらいでしょう」
彼の完登は、ステファノが初登した日からちょうど2年後の同じ日に達成されたのだが、同じくこのラインの再登を狙っているチェコの女性クライマー、ヤナ・シュベツォヴァーとのセッションによるところも大きいようだ。ウィルは次のように説明した。
「ヤナが最初の10日間一緒にトライしてくれたのですが、とても楽しくて、彼女にはたくさんの元気をもらいました。また、彼女のベータのおかげで、上部ボルダーパートの核心の2カ所を解決することができました。ですから、ここで彼女と一緒に登れたことは今回の再登成功にとってとても重要でした」
スコットランドの首都エディンバラ生まれの26歳の彼は、このルートを「これまで登ったなかで最もクレイジーでやりがいのあるルートの一本」と表現し、次のように続けた。
「ルートのトップに立った瞬間は一生忘れられない思い出となりました。Excaliburは、Mutation(イギリス、レイブン・トーにある9a+ルート)以来、リードクライミングでの最も長いプロジェクトでしたので、ついにすべてのピースを繋ぎ合わせパズルを完成できて最高に嬉しいです」
実際のクライミングを振り返り、ウィルは次のように説明する。
「その日の最初のトライではすべてが完璧に進行し、まるで浮いているかのように登ることができて、十分な余力を持ってそれまでの最高地点に到達しました。最後のハードムーブを前にして本当に自信があったのですが、突然の災難に見舞われたといった感じで、次のホールドを取りそこないフォールしてしまいました。1時間休憩し、もう一度ウォーミングアップしてから再度トライしました。今度は上部の核心パート手前のレストポイントに着いた時には疲れてしまっていました。でも、頑張って登り続け、最後の核心ムーブでスロットを完璧にとらえることができました。あとは無我夢中でした。ジャグに飛びつく時にはほとんど落ちそうでしたが、なんとか終了点まで持ちこたえました」
ウィルは、グレードについて、最近はボルダリングに多くの時間を費やしてきたので、「リードルートのグレーディングをするには自分は少し不適格だ」と感じているとしながらも、9b+とされるグレードには同意していると言う。結果、Excaliburはウィルにとって、晴れて初めての9b+ルートとなったわけだ。2021年3月、ウィルはスペインのシウラナでKing Capellaを初登し、9b+とグレーディングしたが、同年11月にアレックス・メゴスが第2登、続いて12月にヤコブ・シューベルトが第3登し、グレードは9bに落ち着いている。Excaliburについて、ウィルは、すべてのムーブを繋げることが全体的な難易度を大幅に押し上げているので、十分に9b+に匹敵するルートになっていると自信を持って言えるとしている。
ウィル・ボシのExcalibur再登は、彼がボルダリングで並外れた成果を挙げた後にリードクライミングに復帰したことを意味する。つい最近までのボルダリングに専念していた期間中、彼は9A(V17)クラスのボルダーを4課題登っている。これは世界のどのクライマーよりも多い。その4課題とは、ショーン・ラブトゥ初登のAlphane(2022年10月)、ナーレ・フッカタイバル初登のBurden of Dreams(2023年4月)、ダニエル・ウッズ初登のReturn of the Sleepwalker(2024年2月)、そして、エイダン・ロバーツ初登のSpots of Time(2024年10月)である。
関連リンク
- ウィル・ボシ、Spots of Time(9A/V17)再登
- ウィル・ボシ、Return of the Sleepwalker(9A)第2登
- Burden of Dreams(V17)、ついにウィル・ボシが第2登