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ヨセミテ エル・キャピタンの「The Nose」を登るためのトレーニングとは?

2019年8月27日

文と写真 = 石鍋 礼/CLIMBING-net編集部

前回の記事からかなり時間が空いてしまいましたが、今回はエルキャピタンのThe Noseを登るために筆者がおこなったトレーニングについて紹介したいと思います。

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まずはこの1冊!

「エル・キャピタンを登ってみたい、でも何から始めればよいかわからない」

そんな時に私が出会った本がこの1冊でした。それまで漠然とした夢に過ぎなかったエル・キャピタン登攀を、もしかしたら自分にもできるかもしれないという、現実的な目標に近づけてくれたのがこの本です。

昨年ヨセミテを訪問した際も、本書を参考にトレーニングを終え、これからエル・キャピタンに挑もうとしているクライマーや、本書を片手にトレーニングに励むクライマーに数多く出会いました。

筆者はクリス・マクナマラ。10代半ばでクライミングを初め、エル・キャピタンを通算70回以上登り、エル・キャピタンで数多くのルートの初登もしているクライマーです。(スーパートポ、アウトドア・ギア・ラボ、アメリカン・セーフ・クライミング・アソシエーションの創始者でもあり、起業家としても活躍しています。)

本書の特徴は、エル・キャピタンを登るのに必要なスキルを細分化し、それぞれのスキルを習得するために必要なトレーニングをどのように、そしてどのくらいすればよいか?が細かく書かれているところ。この本に書かれているトレーニングを地道におこなっていけば、The Noseを登るのに必要なスキルやテクニックの80%くらいをおそらく身につけることができます。

英語版しかありませんが、写真も多く、Youtube上に動画もアップされているので、ぜひ頑張って読んでみてください。

 

全体の構成としては、以下のように分けられています。

1.  緩傾斜帯でのリード(プロテクションはプリセット)
2. 緩傾斜帯でのフォロー(プロテクション回収なしでのユマーリング練習)
3. 垂直〜オーバーハング帯でのリード
4. 垂直〜オーバーハング帯でのフォロー
5. プロテクションをセットしながらのリード
6. プロテクションを回収しながらのフォロー
7.  アンカー構築
8. トラバース帯のリード
9. トラバース帯のフォロー
10. 荷揚げ、ビレイマネジメント、リードの交代
11. ビバーク、食料、水
12. 敗退、撤退

詳しい内容は本書に譲りたいと思いますが、例えば1. 緩傾斜帯でのリードのトレーニングは、70〜80度くらいの傾斜の壁を使って、ボルトラダーもしくはプロテクションをプリセットした状態で、アブミを使って登る練習を数十回、反復練習することが推奨されています。またそれぞれの反復練習をする際に、ストップウォッチを使って、時間を計りながら練習することが推奨されています。

傾斜の緩い壁にセット済みのプロテクションを使ってアブミで登るなんで、すごくカンタンそうですよね!ところがどっこい、実際やってみると思ったより難しいのです。最初はアブミがぐらぐら揺れて安定せず、アブミの上段に足を入れるのも手間取り、自分で考えている以上に時間がかかります。


緩傾斜帯、トップロープでのエイド反復練習

ただ同じ動作を何度も繰り返すうちに、動きが洗練され、スムーズに登れるようになってきます。単純な練習に思えますが、高さ900mのエル・キャピタンを人工登攀で登るとなると、この単純な動作を何百回も繰り返す必要があります。フォロワーのユマーリングも同様です。ユマーリングの動作は単純ですが、慣れないと動作のひとつひとつに余計な時間と力がかかってしまいます。単純な動作を、いかにスムーズかつ無意識にできるようになるかが成功の鍵のひとつと言えます。

このような感じで本書では、ビッグウォールクライミングに必要なスキルを細分化し、個別に反復練習をして、それぞれの完成度を高めてから、複合的なトレーニングをすることが推奨されています。

野球でいえば「素振り」や「キャッチボール」からはじめ「バッティング練習」「ノックでの守備練習」へと進み「練習試合」を経て「本戦」に臨むような感じですね。個別の単純なトレーニングは地味で退屈ですが、それぞれの基本動作を無意識にスムーズにできるようになることが、本番での成否を大きく左右します。


オーバーハング帯でのフォロー反復練習

またクライミング以外の動作の反復練習の重要性も強調されています。各ピッチの終了点に到着してからおこなうアンカー構築、フォロー用ロープの固定、荷揚げ用具のセット、荷揚げ完了後のホールバッグの固定といった単純作業も、実際時間を計ってみると思った以上に長くかかります。

またフォローが登ってきたあとのギアの受け渡し、リードの交代なども時間短縮の大きなポイントです。ザ・ノーズは合計31ピッチですので、各ピッチでの諸々の作業を30回以上おこなうことになります。各ピッチでの作業を仮に10分短縮することができれば、10分x30回 = 300分 = 5時間の短縮です。

これらのクライミング以外の作業の練習はどこでもできますので、雨で登れない日や、岩場でのトライの合間などスキマ時間を使って練習するのがおすすめです。


荷揚げの反復練習

ホールバックのアンカーへの固定方法や、キングスウィングのピッチでのフォロー方法など、この本だけでは分からない部分もありますが、「いつかエル・キャピタンに挑戦してみたい。でも何から始めればよいか分からない」という方には強くオススメしたい一冊です。

次回はThe Nose登攀の準備として登ったいくつかのルートを紹介したいと思います。

石鍋 礼

1975年生まれ。14歳でクライミングを始め、16歳で5.12a、19歳で5.13cまで登るも、大学卒業後、就職と同時に社会の波に揉まれ、クライミングから疎遠に。。。その後、20年のブランクを経て「ビッグウォールを登ってみたい」という夢をふと思い出し、2016年からクライミングを再開。2018年3月末でサラリーマンをやめ、5月に渡米。現地で1ヶ月半のトレーニング後、6月末に念願のThe Noseを完登。2018年8月からCLIMBING-net編集部にてアルバイト中。

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