目標は世界で活躍し続けること。注目のユース選手、森秋彩の素顔に迫る。

選手 トレーニング 女性
2017.11.22
文=CLIMBING-net編集部 撮影協力=スポーレクライミングジム 協力=(公社)日本山岳・スポーツクライミング協会

これらは全て2017年のたった一年で、14歳の森秋彩さんによって成し遂げられた記録だ。

2003年生まれの14歳、茨城県出身の中学2年生。日本だけでなく、世界を舞台に際立った成績を残し、今年の9月に開催された世界ユース選手権のリード種目やアジアユース選手権など、数々の大会で優勝を果たしている。同世代にはジャパンカップで最年少優勝の伊藤ふたばや、世界ユース選手権のコンバインド種目で優勝を飾った谷井菜月がいるが、特にリード種目では他を寄せ付けない圧倒的な強さをみせている。

その活躍はユース世代だけに留まらず、2016年のリードジャパンカップで最年少優勝したのち、2017年のリードジャパンカップで2連覇、ボルダリングジャパンカップでは4位と全年代を含めてもトップクラスの実力・実績をすでに手にしている。

スポーツクライミング注目の次世代選手、森秋彩さんの素顔に迫る。

もともと木登りが好きで、登りきったときの達成感が魅力

ーークライミングを始めたきっかけを教えてください。

小学校一年生のときに、お父さんに連れられて自宅近くのクライミングジムに行ったのがきっかけです。もともと木登りが好きで、公園とかで木登りをしていました。登りきったときの達成感が好きで、何回かクライミングジムに行くうちに自然と夢中になっていました。

ーー練習の頻度はどれくらいですか。

週に3、4回です。平日に3日間、土日はどちらか片方で、1日登ったら1日レストを入れるようにしています。平日はだいたいリードが2時間、ボルダーが1時間ほどです。レストの日は家で筋トレをしていて、自分の部屋のドアにキャンパシングボードを設置しています。

ーー練習メニューはどのように考えていますか。

練習メニューは日本代表合宿でもらったり、現在通っているスクールで教えてもらっています。

今の練習スタイルは公式戦に出場するようになってから固まりました。公式戦が始まる前まではボルダリングを中心に自由に登っていたのですが、公式戦に出場するようになってからは、コンペの日程に合わせてトレーニングをしています。

ーー普段はどのような練習をしていますか。

基本的に本番よりも難しい課題をトライしています。リードでは5.14aと5.14bを連続で休まず登ったり、ボルダーだと1級〜初段を全部登って、その後に2段とかできそうな課題を登ります。練習では限界グレードをトライし続けて、普段から難しいホールドばかりを触っているので、コンペでは逆にホールドが持ちやすいと感じることもあります。

オンとオフのメリハリをつけて、普段から高い集中力で練習に臨む

ーークライミングと学校の両立はできていますか。

学校との両立にはあまり苦労していません。平日の夕方は基本的に練習をしていることが多いので、勉強は朝にしています。朝起きて勉強して、朝ごはんを食べてから学校に行って、夕方から練習というパターンが多いです。土日の片方はレストにしているので、休日のレスト日は映画を見たりリラックスしています。

ーークライミング以外で好きなことはありますか。

運動だと走ることが好きで、長距離のマラソンが特に好きです。練習が結果に直結していくのが好きで、タイムを計って練習した分だけ、実際に早くなるのが楽しいです。他には、フットサルをやっていたときもありました。

家ではドラマを見たり、料理を作ったりしています。あとは、弟がいるので、工作でなにかを一緒に作ったりすることもあります。まだそんなに難しいものは作れませんが、何かを作るのが好きです。

ーー普段からクライミングのことを考えていますか。

クライミングのときはクライミングのことしか考えませんが、リラックスしているときはクライミングのことは一切考えていません。練習しているとき以外で、クライミングのことを考えるのがあんまり好きではないです。登っているときに集中して考えて、終わったら何も考えない。

始めたばかりのころは、本当に「クライミング大好き」といった感じで、常にクライミングのことしか考えていませんでしたが、今はオンとオフのメリハリをつけています。

リードは同世代だけでなく、誰にも負けたくない

ーーリード、ボルダリング、スピードそれぞれの種目についてどのように考えていますか。

リードは3種目の中で一番得意な種目なので、同世代だけでなく、女子の中では誰にも負けたくないです。自分の一番の強みは持久力だと思っているので、練習ではいつもギリギリまで追い込んで、落ちるまで登り続けています。

ボルダリングは苦手な課題が多くて、克服するところがたくさんあるので、勝ちたいというよりは追いつけるように頑張りたいです。コーディネーションのような複雑な動きやランジのように飛びつく動きが苦手なので、今はそういった動きを重点的に練習しています。ボルダリングでは野口啓代さんや野中生萌さんを目標にしています。

スピードはパワーも必要で、大人より不利なので一番の課題だと思います。ロシアがすごく強いので、ロシアの選手を参考にしています。練習自体もまだ始めたばかりなので、これからどんどん練習して世界に追いつけるようにしたいです。

ーー3種目の中で一番好きな種目はありますか。

3種目の中ではボルダリングが一番好きです。最初に始めたのもボルダリングでした。コンペだとリードは一回落ちたら終わりで、すごくリスクがあります。ボルダリングは時間内であれば何回でもトライできて、自分の思う存分登れるところが好きです。

ーー外岩には行きますか。

秋や春のシーズンに2、3回行く程度です。
外はリードとか怖い部分も多くて、インドアのほうが好きです。岩では人によって使うホールドも違ったりするので、インドアのほうがコースがはっきりしていて、持つホールドも決まっているので、分かりやすいです。

コンペは練習で追い込んだ分、自信を持って戦える

ーーコンペに出るようになったのはいつ頃からですか。

小学1年の秋頃にホームジムの草コンペに出たのが最初ですが、公式戦は小学5年生からです。

ーーコンペの好きなところは。

リードは必死で登りっきたとき、優勝が確定したのが分かったときはすごく嬉しいです。
ボルダーは歓声とかでアイソレーションルームにいるときに登れたかどうかがわかるので、他の人が登れていなくて、自分が登れたときは嬉しいです。

ーー練習とコンペの違いはありますか。

やっぱりコンペはプレッシャーがあって、ミスをしたら順位も下がるので、緊張します。コンペと練習だと、練習の方が思う存分トライができるので楽しいです。

ーー今までで一番印象に残っている大会はありますか。

今年の9月にオーストリア・インスブルックで開催された世界ユース選手権です。この大会で、オリンピックフォーマットのコンバインドを初めて体験したので、印象に残っています。また、リードで予選から決勝まで一度も落ちずに優勝できたのも嬉しかったです。

ーーコンバインドは初の挑戦でしたが、どうでしたか。

3種目を一気にやるのは、体力的にもけっこうきつくて、特にスピードはあんまり慣れていなかったので、練習の成果を出せませんでした。実際に経験してみて、スピードは練習よりも全然遅くて、実力を発揮するのがすごく難しい種目で、まだまだ実力不足だと分かりました。リードとボルダーはいつも通りの力を発揮することができたので、良かったです。

目標は3種目全てで、世界で活躍し続ける選手になること

ーー選手としての目標はありますか。

目標は3種目全てで、世界で活躍し続ける選手になることです。

1種目、一回の大会だけではなく、リード、ボルダー、スピード全てで、ずっと世界で活躍し続ける選手になりたいです。リードだけ強いのではなくて、3種目とも良い成績が残せるように頑張りたいです。IFSCのワールドカップも出場できるようになったら3種目全部で勝ちたいです。

ーー直近の目標はありますか。

近いところの目標は、ボルダリングのジャパンカップで表彰台に乗ることです。
去年は4位と後一歩のところで表彰台に乗れなかったので、今年は力をつけて上位の選手とも良い勝負が出来るように頑張りたいです。

ーー東京五輪2020は意識していますか。

出場したい意識はあります。そのためにも3種目を練習しています。出られるなら出たいけれど、代表枠はすごく狭いので、まずは出場することが目標です。出場することができたら、もちろん金メダルを狙います。

ーー目標にしている選手はいますか。

目標にしている選手は、今年のリードワールドカップで優勝したスロベニアのヤーニャ・ガーンブレット選手です。一つの種目だけではなく、ボルダーとリード両方とも強いので、凄いと思います。3種目満遍なく強い人が凄いと思っているので、ヤーニャを目標にしています。

運動が苦手な人こそ、クライミングをやってみてほしい。

これからクライミングを始めたいと思っている人に伝えたいことはありますか。

もっとたくさんの人にクライミングの楽しさを知ってほしいです。
クライミングは年齢層も広くて、運動が苦手、スポーツが苦手でも、むしろそういう人ほど得意だったりします。私も元々そんなに運動神経が良いほうではありませんでした。運動に苦手意識を持っている人こそ、ぜひやってみて欲しいと思います。

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