東京五輪正式種目の試合観戦をもっと楽しむために知っておきたいこと【ボルダリング・上級編 】

ボルダリング 大会
2017.05.24
協力=公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会 文=小川郁代 写真=萩原浩司

アイソレーションとオブザベーション

競技の前、各選手はアイソレーション、つまり「隔離」するための部屋で待機します。これは競技前に、これから登る課題を見たり、見た人から情報を得たりすることができないようにして、選手全員が同じ条件で戦うために設けられたルールです。

では選手はどの時点で課題を見ることができるのでしょうか? 予選と準決勝では競技時間が開始して初めて、これから登る課題を見ることができます。休憩の時間は、会場内の指定された休憩場所で待機しますが、この間は他の課題や、人が登っているところを見ることができません。

競技の動画などを見ていると、ほかの選手が登っている間、壁に背を向けて観客席のほうを向いて座っている選手の様子をみかけることがあります。あれは「人の登りになんてかまってられない!」とソッポを向いているのではなく、課題を見てはいけないというルールがあるからなんですね。

オブザベーションをする選手達。選手同士で、登り方について相談することもOK。
ライバル同士なのに、順位を左右する情報を共有するなんて、珍しいスポーツ。

実際に登る前に課題を見て、登り方や手順(ムーブといいます)を頭の中で組み立てることをオブザベーションといい、競技以外のクライミングでもとても重要なことです。競技でなければゆっくりと時間をかけてオブザベーションすればいいのですが、たった5分の競技時間のなかでムーブを組み立ててすぐに実践するのですから、登りのテクニックだけではなく、オブザベーション能力も競技には欠かせない技術です。

いっぽう決勝では、競技開始の直前に、全員で一斉にすべての課題について2分間ずつのオブザベーションを行ないます。一度に何本もの課題のオブザベーションをして、最後に登る選手は待っている間に忘れてしまわないのかと心配になりますが、一流の選手は、一度見た課題は忘れないそうですよ。

スコア表が読めると競技の臨場感が倍増!

競技の間、選手たちのトライの結果はスコア表に順次記録されます。会場で観戦するときには会場内のスクリーンに、テレビなどでも時々画面に表示され、リアルタイムで競技の途中経過を確認することができます。

見慣れないとなんだか数字が並んでいるだけの表ですが、ポイントをつかめば意外と簡単。スコア表を見ていると競技の成り行きがリアルにつかめて、観戦の醍醐味を味わえます。

ここでは2017年1月29日に行われた、第12回ボルダリングジャパンカップ女子決勝のスコア表をもとに、読み方をチェックしていきましょう!

赤枠で囲われた部分に注目してください。Tというのはトップのことで完登を意味しています。その右に書かれている数字は完登までに要したトライ数です。Bはボーナスを意味していて、右の数字はボーナス保持までのトライ数です。このリザルト表では、赤枠で囲われている部分が選手が完登した課題になっています。

伊藤ふたば選手の場合、第1課題を1回目のトライでボーナスを保持、2回目のトライで完登しているのでリザルト表は「T2B1」となっています。

リザルト表の一番右側にあるトータルは4課題のトップとボーナスまでに要した数字をそれぞれ足した結果です。数字が同じ場合は、「完登数」>「完登までに要したトライ数」>「ボーナス数」>「ボーナスまでに要したトライ数」の順番にみていきます。

競技団体や情報を発信するメディアなどによって表記に若干の差はありますが、ワールドカップなど海外の競技会でも基本は同じ。すぐに内容は理解できるでしょう。競技を観戦するときは、ぜひリザルト表にも注目してみましょう!

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